「方程式の一部に組み込まれたようです」
2年くらい前によく泊まりにきてくださっていたかた。その後引っ越しされた関係もあり、ご無沙汰していましたが、仕事の休みを利用して久しぶりにまたきてくださった。
各地に泊まりにでておられるようで、場所場所、泊まって感じたことの話を聞くのが面白い。印象に残っているのが、システムだった宿泊施設が増えたという下り。デフレでビジホもゲストハウスも価格が下り、その分の人件費を抑えるためか、要所要所の人員配置を無人にしても機能する新しい宿が増えた、と。そしてそういう宿に泊まると、自分がひとつのピースのようになって、そのピースが当てはまってようやく宿泊という行為が成立する、と。「方程式の一部に組み込まれたようです」、というようなことをおっしゃっていた(私もなかでの解釈ですが)。
方程式の一部、ですか。もちろんそういう宿泊を求めている人がいるから成り立つわけですし、私だって場合によってはそういう宿泊が心地いい瞬間もあるかもしれない。
でも宿を生業としてやる場合、そういう宿をやりたいとは思わない。そこから収入を得ることはできるだろうけれど、収入以上のものを得られる気がしない。
一方で、うちのような小さなゲストハウスは日々、苦悩と喜びの連続だ。苦悩の原因はやはり集客だったり、満員でも1名の宿泊者でも同じだけの人件費がかかることだったり、そういう数字の面がほとんど。そしてその苦悩と喜びは表裏一体だったりもする。決して多くはないかもしれないが「ここに泊まりたいからきました」という人と出会え、ゲストから自分の知らない世界を教えてもらい、スタッフとぶつかりながらも思いを共有し、卒業したスタッフが時折近況報告に訪れる。宿で出会った二人の結婚式に呼ばれたりもする。そういう、収入以外の報酬がとてつもなく大きい。
もちろん我々はゲストひとりひとりのことを方程式の一部のようには思っていないし、これからもやっぱり自分たちにとっても楽しい現場であり続けるように舵取りをしてゆきたい。
1166 バックパッカーズ
素泊まり・相部屋・1泊からお泊まりいただけるゲストハウスです。ひとつだけ個室もあります。
「夜中通して飲むぞー!」というような宿ではないような気がします。かといって交流のない空気の停滞した宿でもないと思っています。慌ただしい日常から離れ、自分自身と対話をしたり、ゆっくり読書を楽しんだり、気の合う人とおしゃべりをしたり。新しい世界が気になりだした皆さまの隣で、同じ景色を見させていただきながら、必要とあらばときにそっと背中を押せるような宿でありたいと思っています。スタッフ一同、皆様とお会いできる日を楽しみにしております。
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