『朝の風景』

朝出勤の日は、だいたい7時すぎに宿に着く。善光寺さん真裏の自宅から、善光寺さん境内を通りながら行ったり、路地を通りながら歩くこと10分弱。

宿前についたら鍵のかかった玄関の引き戸をあける。すると時々早起きのゲストが薄暗い灯の元、ふぅ〜っとお白湯を飲んでいたり、いそいそと荷物の支度をしていたり、ちょうどお手洗いに降りてきたところだったり、そういうタイミングで出くわす。

「おはようございます」「早起きですね〜」「寒いですね〜」なんて言いながら私はカーテンを開け朝の光をいれる。まだ着いていなかったらストーブをつけ、電気をつけ、手を洗いにゆき、そして湯を沸かし、場合によっては雪かきをし、テーブルなどをザザザザザーっと吹き直す。その頃には湯はしっかり湧いているので、コーヒー豆を洗面所で挽き(これには理由がある。キッチンで電動ミルを回すと天井壁が薄い影響で2階の客室に響きやすいのだ)、ぽとぽととコーヒーを淹れる。先に起きてきている旅人に、「コーヒー入りましたよ」なんて声をかける。

ここまでゆくと、一段落。コーヒーをすすっている旅人に「眠れました?」「最近どうです?」なんて声をかけたり、本を読んでいらっしゃったりすればそうっと小さく音楽をかけたりする。

こういう朝の時間がとても好きだ。朝をどう過ごすかというのはその後の1日に影響してくると私は思う。だからできるだけ旅人の作る流れに逆らわないようにする。

この日の朝は、私が宿に到着した段階でちょうど観光に出ようというリピータの男性がひとり。そしてコーヒーを落としているころにくしゃくしゃの髪で寝巻き姿で降りてきた可愛いリピータちゃんがひとり。まだ部屋全体は温まっていないのでストーブにへばりつく。コーヒーがはいったころに朝ごはんに降りてくる素敵なカップル、そのカップルが朝ごはんを食べ始めたころに「わー久しぶりです」とバッチリ目の覚めた顔で降りてきた4年ぶりくらいのリピータ女子。

前夜もひと盛り上がりした旅人同士が、またテーブルを囲みおしゃべりをしだす。この宿に集まってきてくれる旅人たちは、本当に感じの良い人たちばかりだなとつくづく思う。

いつも来てくれて、来れずとも気にかけてくれてありがとう。

飯室でした

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