ゲストの目線とスタッフの目線

 とあるカフェに昨日、今日と二日連続で来た。コロナ禍中だからか、いつ来てもテイクアウトの客はいるが店内で過ごす客はほとんどおらず、しかも午前中ともなればいつもたいてい貸切みたいなもの。昨日の午前と同じ席にまた座る。そうすると、どうってことはない話ではあるが、昨日と同じ椅子の手すりに、昨日と同じ角度で黒いヘアピンが1本残されていた。

 席でパソコンをひらげコーヒーをいただいていると、感染症対策から定期的にスタッフがテーブルを拭きにくる。しかしヘアピンには気がつかない。

 小さな出来事だがいろいろと考えさせられた。ひとつはスタッフの怠慢を考える。見る限り責任者という感じのスタッフはおらず(アルバイトなのかもしかしたら社員かもしれないが、肩書きはどうでもよくって、どちらにせよ気持ち的に "責任者と言われてもいいくらいの責任を持って働いている人" はいない様子)。ここが自分の宿であれば、残されたヘアピンを片付けながらまずは軽くスタッフに報告をして、続くようであれば「おいっこら!」となるな、なんて想像する。

 一方で、違う角度からも考えてみる。意識だ。働く側で自分の働く店を汚したい人はもちろんいないだろう。好きでここで働いているはずだ。ただ「(残されてるヘアピンに)気付くか、気付かないか」の問題。「自分が思いも寄らないところが汚れているかもしれない」と思いながら掃除をするか、ただのルーチンワークとして決まったところを目をつぶりながら掃除しているのか。

 さらに深掘りすると、働く側の目線と客の目線は異なることが多い。例えば宿でいうと、客室を掃除するときに我々は基本的にはベッドに寝っ転がったりはしない。立ったり座ったりする角度から目に付く床面や棚は掃除するが、意外に忘れがちなのが二段ベッドの下段で横になった時に見える天井(つまり上段ベッドのすのこ部分)だ。他にも例はある。掃除の肝でもあるトイレ。便器が汚れるのは当たり前。スピーディに効率よく、さささっと掃除をするが、ちょっとまてよ、お客さんはトイレで座って、本も読まず携帯も触らずにある程度の時間をゆっくりと過ごす。そんななかで目線は小さなトイレないで動く。あぁ、換気扇に埃が溜まっているな、温便座の電源コードが汚れているな、なんて。

 慣れというのは怖いもの。ルーチンワークではなく、ゲスト目線で見るということが大切。自分たちへの今後の掃除の戒めとして。

 飯室でした

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